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『週刊少年ジャンプ』 2017年第28号 「シューダン!」第1話 「ぼくらのフットボールアワー」 感想

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さてと。『週刊少年ジャンプ2017年第28号』 新連載『シューダン!』第1話 「ぼくらのフットボールアワー」の感想です。






「背すじをピン!と」の横田卓馬先生が帰ってきました。ぶっちゃけ「早!」って印象ですよね。終わってからまだどれくらい...半年経っていないですよね。

ほとんど休暇取れていないのじゃないかと心配になりますけれど,肝心の漫画の方はなかなかどうして。個人的にはこれはアリか無しかで言ったら「アリだ!」っていう作品の魅力が出ていた第1話じゃないでしょうか。



ぶっちゃけた話,予告で題材が「サッカー」と見た瞬間,「ああ...(達観)」ってなったんですよ。

語るに及ばず,『ジャンプ』でサッカーときたら大当たりしたのは『キャプテン翼』ぐらいです。ほか,1年ぐらい続いた作品はあったようですけれど,基本的にジャンプでサッカー漫画とくれば死屍累々の山を築けるくらい当たらないのが定説。



『週刊少年ジャンプ』2017年第27号予告より


なので横田先生はずいぶんと難しい賭けに出たなあ...と思いつつ,まあダンスは円満だったからまだノーアウトだし挑戦できると踏んだのか,何が何でもジャンプにサッカー漫画を定着させたいというジャンプ編集部の意地による挑戦作なのかみたいな気分で目を通してみたのですが...いや,これ面白いと思うよ。




『ジャンプ』の新連載で必要なのは「コンセプトのわかりやすさ」「話のスピード感」そして何よりも「読者の共感」だと思います。『シューダン!』第1話を見る限り,それは全部揃っていたんじゃないかなと思ったり。



「シューダン!」は共感できた



まずコンセプトの分かりやすさ。サッカーという,改めてスポーツとしての背景を説明する必要が無いくらいメジャーなスポーツにおいて,小学生の「少年団」を題材にするという。これは上手いね,といわざるを得ない。

前作「背すじをピン!と」においては,ダンスというあまり読者になじみの無いジャンルを取り上げたことにより,競技としての面白さを読者にとっての「新しい情報」として適宜提示していくことで物語を組むという手法が成功した反面,ダンスを題材とする上で読者に提示せざるを得ないこと自体が「説明的」と捉えられるリスクもあったわけです。もとより競技の背景がメジャーでは無いだけに,かなりリスキーな主題選択であった。



分かりやすい世界観

その点,サッカーは競技自体の説明は不要です。まして今作品においては小学生の少年団を題材としてあつかっており,市井のサッカー少年には改めて説明する必要も無いような,いろんな「あるある」を今後のお話に詰め込んでいけるからです。



次。お話のスピード感。これもなかなか上手くいったんじゃないでしょうか。主人公たちの所属する少年団の背景説明から,ヒロインの投入,そこからのミニゲームまでの流れはとってもスムーズでした。

第1話はどうしても舞台背景を説明しなければならないのですが,そこは割とあっさり目に流しています。サッカーですから多様なポジションの選手を説明していかなければならないのですけれど,そこはミニゲームを描くことで「口先や説明ではないリアルな選手像」として少年たちの特徴を表せていると思います。選手たちの特徴,チームとしてみた時の力と魅力,そういったものがミニゲームを通じてキチンと描けている。



「サッカー漫画」としての面白さ

そしてなにより,第1話からミニゲームという形で試合を描いたことにより,競技としてのサッカーの面白さもちゃんと表現したところですかね。試合後半,晶・ソウシ・ロクを中心とした駆け引きとそれにきちんと乗っかるチームメイトのやりとりは,「サッカーの面白さ」をきちんと描けていたんじゃないかなと思ったり。


話は少しそれますが,「サッカー漫画」の面白さっていろんな表現方法があると思うのですよ。サッカー漫画に限らずスポーツを描くには,

1.何処か突出した才能を持つ選手を出してその選手を軸に物語を進める方法
2.スポーツの活動内容を身近なレベルに落として読者の共感を誘う方法

があります。今回とったのはこの後者の方だったわけですが,これは最後に取り上げる「読者共感性」に訴えかける「面白さ」ですよね。『キャプテン翼』やつい先日終わってしまった『オレゴラッソ』の第1話は,主人公の突出した才能を示すことで関心を引いたわけですけれど,『シューダン!』はそれとは違う。


少年団という身近なレベルに話を落としこんで組み立てている。この少年団という題材も上手いな,と思ったのですが,中学生以上になるとどうしても学校同士の「部活動」になってしまい,世界観が狭くなってしまいます。また部活動となればどうしても学校同士の「勝負」がお話の主題となり,話の組み立てが勝ち負けに終始することになります。


少年団サッカー「あるある」

その点,少年団というのはお話にもあったように「なんとなくやって」いたり,「習い事としてやって」いたりというのが普通なように,ほどほどに好きだけれど勝ち負けだけが全てじゃない。でも「サッカーをするのは好き」という,小学生読者にもいかにもありそうな背景レベルで物語を描くことができる。

そこには「勝ち負け」もあるけれど,「勝ち負けだけじゃない」ものも描くことができる。練習のちょっとしたあるある。集団で活動する時のちょっとした諍いや仲間としての共感。

そうした少年団サッカーチームの「日常」を描いていくことができる。これこそ,「背すじをピン!と」において素人がダンスの面白さに飲めりん込んでいく姿を上手に描いていってくれた,横田卓馬先生の真骨頂という気がします。



婉曲的タイトル(シューダン!=集団)回収?

この『シューダン!』ですが,これまでのサッカー漫画とは違う色んな「狙い」があって,練りこまれて作られている感を感じるのはそういう部分です。読者の身近なレベルに落とし込んだことにより,「あるある」という共感を導きやすくするように心がけている。

かといって,漫画として平凡な日常に終わらないように,極普通の中の下レベルの少年団サッカーチームに「女子」を入れ込んでいくことで物語に起伏とつけていく。



女子!


なるほどなー,と思いましたね。小学生なら男女の身体能力差は絶望的な差が出ていない時期ですし,このころなら男女が一緒にスポーツすることも十分「アリ」です。男の子の中に女子が入ってほどほど活躍できることについてもある種のリアリティがあり,十分「アリ」です。


アリか無しか言ったら...アリだ!


晶という少女の存在が,かなりアクセントになっていて(というか,最初に一読した時には晶が主人公なのかと思った),スポーツとしての「サッカ」ーも,少年団という「集団活動」も,小学6年生という微妙な年齢の「男女関係」も描くことができる。



ちょいと枯れたオッサンからすると,小学6年生あたりってとっても懐かしくもありワクワクするものであり,ドキドキする時間だったんですよ。


『シューダン!』の舞台設定をこのようにしたのは,あくまで小学生から10代の読者をひきつけたいという狙いがあったのでしょうけれど,いやなに,小学生時代を昔においてきた社会人のおじさんたちにとっても十分眩しい時代なんですよ。



ちょいと活発でかわいい小生意気な女子

いたじゃないですか。クラスでちょっと目立つ,スポーツもできる活発でちょっと可愛い娘。小学生のころは恋に目覚めていないので,何となくそういう存在を恋愛的には見なかった。けれど振り返ってみて「いい娘だったなあ...」って子。晶はそんな雰囲気を有した女の子である。



そんなオッサンとして皆さんにぜひ声を大にして言っておきたいことがある。


そのとおおぉぉり!(児玉清)



この先,少年団サッカーとしての面白さを色々描いてくれるのだろうなあという期待に加え,やがて出てくるであろう「性差」による身体能力の問題,そしてなにより小学6年生ぐらいの男女の微妙な距離感。想像するだけでオラ,今からワックワクすんぞ!


ワックワクおじさん


ということで期待大なサッカー漫画なのでした。まる。






横田先生の前作,「背すじをピン!と」第10巻はこちら


てか,この少年団「浜西FC」のワックワクコーチ(巨瀬達也さん)って,前作の登場人物なのですね。世界観がつながっていて面白いです。





*画像は『週刊少年ジャンプ』2017年第28号,同27号より引用しました。

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