
さてと。『ニセコイ』 第228話 タビダチ (週刊少年ジャンプ2016年第35号)の感想です。
はい。
まあ何と言うか,この「ざっくり感」こそが『ニセコイ』だよなあという感じを抱きつつ,巻いているというか「畳んでいる」感じがなんとも...マッタリしていますね。ひとことで言うと「終戦処理」ッて感じですかね(ちょ)
今回のお話で描かれたことを一つ一つとりあげていくと「?」みたいなことがまだ結構あるんですよ。ただまあこれまでの『ニセコイ』でもあったのですけれど,もう「細かいところは想像してね」的に敢えて「描かずに」読者一人ひとりの受け止め方に委ねる形でまとめることにしたのかな,という印象です。
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まあ考察ブログなので,とりあえず「?」というか違和感を感じたところは一通り指摘しておきますね。まず煽りなんですけれど,

「想い,通じて...?」
なぜ「?」なんだ...。通じたから抱き合って泣いているのではないのか。後の会話を見ても「通じている」ことは確実なので,なぜ「?」をくっつけたのかはよく分かりません。まあこれは大したことではないのですけれど...。
で,千棘の今後について楽と千棘が語り合うわけですが,そこも結構「?」が多かったりする。
予想通り千棘は「やりたいこと」を実現するために凡矢理に戻らない選択をしたわけですが,その状況設定がなんというか...とっても...『ニセコイ』ですね。
楽と千棘を一旦切り離す「状況」をつくるための設定を千棘に言葉で「語らせる」わけですが...

千棘のやりたいこと
「ママの知り合いでそっちの道の有名な人が私を誘ってくれてるんだって 見込みがあるって」
「ただその人に着いて行くなら今しかチャンスがなくって わたしやっぱり付いて行こうと思うの」
まあ前段の状況設定は分かるんですけれどね。後段の「今しかチャンスはない」は状況設定のための条件ですから,まあ漫画的というか『ニセコイ』的ご都合を感じざるを得ない...。
でもまあこれはまだいいんですよ。千棘が「自分を変えたい」というやる気も前向きでいいと思いますし ―――まあ,楽は今の千棘が好きになったんじゃないのかい,というツッコミは残りますけれどね(笑)
それに対しての楽の反応ですよね。

「バーカ なに言ってんだ 行ってこいよ」
「お前が何を目指してんのか知んねーけど 自分なりに真剣に悩んだんだろ? せっかくのチャンスなんだろ?」
「だったら迷うこたねぇ 頑張って来いよ いつまでだって待って得てやるから」
「うん...」
とっても楽らしい反応だと思いますし,一条楽はこんなことを言うのは分かるんですよ。楽は千棘がそう言ったらそうやって送り出してあげる奴だってのはこれまでの人間像をみても明らかですしね。
だ・け・ど!

楽の選択の理由(第226話 ケツベツより)
お前が千棘を選んだ理由は「こいつとならオレが想像もしなかった世界に 一人だけじゃたどり着けないような世界にも 二人でなら行けるような気がする」という理由がありましたよね。いつも一緒にいたい,という気持ちを殺して好きな人のやりたいようにさせてやる男気は立派なんですけれど,
だったらお前,千棘が何をやるつもりなのかきちんと聞いておかなきゃいけないんじゃないの?
という疑問は残ります。
「それ」が将来千棘と自分がどこまでも進む「道」になるかもしれないのですよね。その夢を共有することなく,一体全体千棘と「何」を成し遂げたいから10年来の恋も,ずっと両片思いだった「恋」もかなぐり捨てたのかよくわからないじゃないですか。なんというか,そこがちょっと「軽い話」に感じられてしまうのが気になりました。
そんな抽象的で,はっきりしない「何か」で選ばれなかった小野寺さんがさすがに不憫かな,と思います。

Youはなにしに大学へ?
それは楽さんの「進路」にも関わってくるわけですけれど,結局楽は普通に大学進学しているんだよね。「公務員になるために凡矢理大学に行きたい」と進路相談でいっていましたけれど,楽の夢はそれで変わらないのでしょうか?変わんないなら,楽が千棘を選択した理由ってなんなのという気もしてしまいますしね。
いやこれでね。千棘が「何」をこの先やりたいのか夢を共有しておいて,じゃあ自分はそんな千棘と一緒に歩めるようにスキルを高めておこうという理由で「大学に進学する」なら分かるんですよ。支えあっている感があるじゃないですか。離れてもつながっている感があるじゃないですか。
そういうのが無いんだよね,今回のダイジェストからは。その辺がやっぱり「軽い話」に感じられてしまう。まあ『ニセコイ』的な緩さが最後に来たと考えてもいいのですが...
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その辺の「ざっくり感」というのは千棘と小野寺さんの対面にも表れていますよね。
最初に言っておくと,作劇的には今回の表現が一番無難だと思います。一人の人を二人のヒロインが好きになり,片方とは結ばれてもう片方は結ばれない。そんなとき結ばれた側はどんな顔したらいいのかって,なにも言えませんよ,そりゃ。

なんにも言えねえ...
なので,今回の千棘の反応はとっても自然ではありました。
もちろん,本来であればこれだけの恋をした二人ですから,ゆっくり話しあう時間を持って欲しかったです。お互いがどんな風に恋をし,どんな風にお互いを思い,その結果を受け入れたのか。ゆっくりと,じっくりと10年前に初めて友だちになったこの天駒高原で二人でゆっくり話し合って欲しかったです。
その中で,楽が千棘に対する想いがどんなものであったのか,楽の小野寺さんに対する想いがどんなものであったのか,共有することで「未来」につなげてほしかったとは思います。
まあ結局のところ,「そこ」を突き詰めていくと楽の「二つの好き」とは何だったのかということに触れていかなければならないし,そうした「過去」が今後の千棘と楽のお付き合いの中で陰にならないようにするためには「黙って抱き合って分かり合う」で済ますしかなかったのかもしれませんけれどね。
というわけで,千棘が楽の小野寺さんに対する気持ちがどうこう思うという波乱はなく,小野寺さんの恋は終了という感じ。もとより楽が決めたことを覆すという事態にはなるはずもないので,むしろ当然なんでしょうけれど。

歩み寄るのは小野寺さんから...
逆に言えば,そういう展開を封じるために「黙って抱き合って分かり合う」というある意味テンプレ的な流れだったのかもしれませんけれどね...。集もるりちゃんもなにも言わないし。羽姉さんや万里花,春ちゃんからも一言もないしね。
楽は「ニセコイ」に由来する好き(恋・愛)で千棘を選んだ
で,すべて説明された,ということなんですかねえ・・・(遠い目)
それにしても小野寺さんの精神力ってすごいなあと思いますよ。これだけの恋が結ばれなくて,その後に恋の勝者たる千棘を祝福して。その後の学校生活においても楽と一緒に勉強するとか,並の精神力じゃないよね。
そんな小野寺さんの今の気持ちはどうなっているのかというとーーーきっと恋心の火種が残っているのかもしれないけれど,恋の成就は完全に諦めて自分は違う道に行くーーーみたいな。そんな描かれ方なんですかね。

お人好しな小野寺さん
ちょっと「物分りのいい女」になってしまっている感がありますけれど,小野寺さんはそういうお人好しなんじゃないかと思うので,これはこれ,そういうことになるのかなという印象です。
そんなダイジェストを経て,凡矢理高校を無事卒業する楽・小野寺さん・集・るりちゃん。結局,『ニセコイ』という物語を演じてきた,途中で転校してきた面々はみんないなくなり,最初からクラスにいたこの4人だけが卒業というのも不思議な感じがしますね。

それでも一条君を見続ける小野寺さん
最後まで楽を見続けた小野寺さんが健気で泣けるで...(キンタロス)
結局,小野寺さんと楽の「もう一つのつながり」ってなんだったんだろうなあ...
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*おまけ

女子認定された鶫
以前の予想通りジャケットを差し出すクロード。クロードさんが鶫を女性扱いしていたのが印象的でした。
万里花は治療のためにアメリカに戻ることに。

本田曜子とは何だったのか...
そうそう,本田「曜子」さんてなんだったんですかね。親愛の情を示すためだけに名前を聞いただけだったんですかねえ。いかにも伏線ぽかったんですが,これは未回収ですかね。

千棘が帰国したならビーハイブが凡矢理にいる理由が無くね?という気もするが...
あとはポーラ。ポーラは帰国しないんですね。彼女は日常を選んだということなのかしら。
そんなことが気になったり。
で,次週はいきなり「数年後」にジャンプ。煽りの
「時がめくる青春のラスト1p」

次号予告
というところからは,普通に「最終回」を予想させます。新連載も始まるから,入れ替えとしては当然そうなりますよね。でも228話も続いたジャンプ最長ラブコメ漫画なのに,最終回の予告が入らないなんてことがあるんですかねえ。そこはちょっと気になりますけれど。
ていうかね...

注意深くあるべきことがあったのか...?(第212話 バイバイより)
結局,千棘が凡矢理に戻らないことで楽さんはどんな「注意深くあるべきであった」ことがあったのかなあ...。恋は成就し,千棘がアメリカで修行するのも認めて送り出す。万々歳なのに,何を後悔することがあったのだろう...(遠い目)
ニセコイ 24 (ジャンプコミックスDIGITAL)
さて。淡々と畳に入っている感の強かった228話でした。
ここにきて,物語の展開が急に「軽く」なったというか,重厚な恋物語だったはずなのに,選択が「ニセコイ」というきっかけになったとたん物語にライトな感覚が戻ってきたのは気のせいでしょうか...。
ロジカルだった物語が急にざっくりとした感覚的なものになってしまっている感があり,そこが『ニセコイ』の物語性が気に入っていた身としては釈然としない部分ではあります。
さて前にも突っ込んだんですけれど,楽さんときたら「約束」を何一つまもっちゃいないんですよね。10年前の錠と鍵の約束も,その時に千棘と万里花した約束も,今回バイバイで千棘とした約束も守っていない。
せめて今回の,千棘が成長してくるの待ってやるぐらいはきちんと約束を守ることが,楽にできるせめてもの「誠意」だとおもうので,そこんところはきちんと貫いてやってほしいですね。
*画像は『週刊少年ジャンプ』2016年第35号 『ニセコイ』第228話「タビダチ」,第212話「バイバイ」,第226話「ケツベツ」から引用しました