対三将星・カタクリ戦もいよいよ決着!ということで久しぶりにワンピース感想をば。
『三将星・カタクリ戦の落とし前』
当初圧倒的不利な状態から最後の一撃の勝負まで持ち込んだのはさすがルフィ。しかし今回のビッグマム編においてはルフィの成長ぶりが著しいですね。
戦闘について言えば,最初の将星クラッカーさんと戦ったときにはギア4でビスケット兵を一人倒すのがやっとでした。

千手のクラッカー戦(838話より)
その後ナミの力を借りたとは言えクラッカーを倒し,サンジとの思惑の違いから一方的ボコられ,ぼろぼろになりながら囚われの身になり。ビッグマム主催のプリン・サンジの結婚式の結婚式をぶち壊した際には一発とは言えビッグマムの腕を痺れさせる程度の一撃を与えます。
ひたすら戦い,休み,栄養を補充する度にどんどんと戦闘力を高めながらもカタクリの未来をも見える見聞色の能力を得るも,とちゅうまではほぼ一方的にやられっぱなしだったのがついには最後の一撃を打ち合う所まで来たんですからね。

進化する魔神(第892話より)
なんというか,こと戦闘力に関して言えばこのホールケーキアイランド編におけるルフィの進化はまさに進化する魔神といったところでしょうか(褒めすぎ)。
もとより頂上戦争のころから体力がどうなってんだレベルでしたけれど,ホルモンテンションなしでここまで戦い続ける持久力と乗り越えて新たな力を引き出す様はなかなかにすごいです。最後には未来を見ることができるカタクリに「速さ」を優先したギア4・スネイクマンでタイマン張れるところまで成長したわけですからね。
最終的には,未来予測に対応するには同じく未来を読む力に加え「速さ」というのは以前ヤマカムさんも指摘されていたように思いますけれど,最終的には未来を読める見聞色+速さで解決という形になったのかな。

相打ち
そんな最後の一撃同士の対決は相打ち。最初,ルフィもカタクリも避けたのかなと思ったのですが,これ当たった後の描写なんだね。相手の全力受け止めた二人,ルフィは地の底に叩き落され,カタクリもまたついにダウンして前のめりに倒れ込む。
ダブルノックアウトと思わせておいて,最後に立ち上がって会話をした後にカタクリだけが再び「仰向けに」倒れ込んでダウンという結末でルフィの勝利と相成ったわけですが,なかなかにこのシーン意味深いことであることよ。

決着
一度も仰向けになったところを見たことがないと言われた,ビッグマム海賊団最強の長兄を仰向けにノックアウトしたこともさることながら,その前の会話がね。興味深いね。
「いつかお前はビッグマムを倒しに来るのか」という問いかけ。自分たちの長であるビッグマムではありますが,長兄がそう述べるのはなかなかに面白い。家族として見ているならば他の兄弟同様に「ママ」と呼ぶだろうし,ビッグマム海賊団という組織の長として述べるにしては「ビッグマム」と呼び捨てているのもちょっと気になったからね。
このあたり,家族のつながりを強調しつつも本当の意味での家族とはなっていないビッグマム海賊団の特徴を表しているような感がありましたね。
そしてそれに対して「勿論だ,オレは海賊王になる男だ!」というルフィの答えもまた熱いね。

ビッグマムを倒す意味
かつて子分盃を交わした際に,バルトロメオらも言っていましたけれどもルフィにとって海賊王になるということは武力でトップになることじゃないからね。
ルフィにとって海賊王になるということはこの海で最も自由になるということである。よってビッグマムを倒しにくる意味は,ビッグマムが勘違いによって作ろうとしているこの万国トットランドのあり方をぶち壊して本当の自由の意味を与えることなんだろうからね。
ここまでの戦闘でルフィは二人の将星を倒したわけですけれど,特段死なせてはいない。戦力的に見れば,相手が回復すればその戦闘力は再び脅威になるわけです。しかし倒したことの意味はある。ビッグマム的な価値観に対してルフィが異議申し立てを行い,その一部がきちんと残された証になるわけだからね。

カタクリ,自分の先を見る男を知る
そんなルフィの言葉を受けて「ずいぶん未来を見てやがる......」というカタクリの言葉で終わるのも,見聞色の能力をさらに進化させ,未来が見えるもの同士となったルフィがカタクリ以上の先を見据えたことで「カタクリを超えた」暗喩につながっているのも,また良いし。
そんな好敵手に対し,最後に彼のコンプレックスでもあり嘲笑の対象であった裂けた口を帽子で隠してあげるところもまた,カタクリの束縛から自由にしてあげた感があって,なんとも感慨深いシーンでありました。

ルフィの心意義
成長という意味では今回の旅では戦闘力の伸長に加え,船長としての成長も見られた今回ですが,まずはカタクリ戦において成長の証明をしてみせたのかなというエピソードでした。
『ルフィとサンジの落とし前』
さてカタクリに勝ったものの,この後ミラーワールドから元の世界に戻って仲間と合流し,ホールケーキアイランドから脱出しなければならないのですが,どうやって脱出するのかいな。
ナミたちも心配していた,「ミラーワールドからの脱出」と「時刻の把握」はとりあえずペコムズの登場もありクリア。問題はミラーワールドから出てきた時にどうやってサンジと合流して船に戻るか,ですね。

脱出経路
カカオ島にある割れていない鏡は公式には一つです。ここから出てくれば,ビッグマム海賊団の千兵万馬に取り囲まれて脱出はほぼ不可能です。覇気の尽きたルフィとサンジ,懸賞金3億レベルのペコムズしかいないわけですからね。個々の兵卒は万全なら倒せても,数の力には敵い難いでしょうから。
とならば考えられる対処法は,「広場の鏡から出ない」という手段しか無い。考えられる方法はとりあえず3つ。
一つはブリュレを捕まえておいたペコムズが別の場所に脱出口としての鏡を設置しておいたという方法。
これならばビッグマム軍団の目に触れずに脱出できる。ペコムズは3億の懸賞金がつく戦闘兵ですから,自分の指揮権のある船の一隻ぐらい自由になるのかもしれない。であれば,大艦隊の一隻に自分の船を紛れさせておき,そこにルフィ(とサンジ)を回収して逃げ出すという方法は考えられます。
もう一つは,プリンが鏡を持っている場合ですね。
プリンも女の子ですから手鏡やらコンパクトを持っている可能性はある。もっとも三つ目の姿を憂いていた彼女が自分の顔を眺めるような女子かどうかは判りませんが。
あとはプリンの手持ちの鏡から出るためには,ペコムズとの連携が必要になりますけれども,現状そのような打ち合わせをする局面はありませんでした。なので,ペコムズが別に鏡を用意しておいたという方が自然のような気がしますね。
最後はベッジの船の鏡に出るという方法です。

ベッジの男気
ただまあ,この場合ナミたちと合流するのにもう一手間かかってしまいますが。ただこの方法の良いところは,ビッグマムがケーキを食べてた後に今度はルフィたちに気を惹き付けることにより,ベッジたちが助かる可能性が出てくるという点ですかね。
ここにきてベッジの格好良さが天井知らずというか,男気を感じる男になってきたので彼も生き延びてほしいところですが。家族という対比でみたとき,家族を口にしながら実は家族を大切にしていないビッグマムの対比として,ある意味ルフィと同じ側の人間として描かれている彼は死なすには惜しい男。
まあ可能性としては「ほぼ無い」線だと思いますが,一応あげておきます。
『ジェルマの落とし前』
で,どうにかして直接戦闘を避ける形で一時凌いだとしても,ビックマムの大艦隊に追いかけられることは必至です。ここでもまた戦力の差が問題になってくるわけですが,逃亡の時間稼ぎをする手段が必要ですよね。
そこで考えられるのがジェルマの乱入かなと。

ジェルマ王国の逆襲(882話より)
ビッグマムとの直接対決や,将星には敵わなかったものの残る大臣レベルの兄妹ならばジェルマの姉弟たちは倒せるようです。残る将星はスムージーですがカカオ島にはいませんし,ビッグマムはケーキを追いかけて遠くにいます。多勢に無勢という点では変わりませんが,大量のジェルマ兵もいますから,時間稼ぎぐらいはできるかもしれませんね。
そうそう,乱入のタイミングによってはジェルマの船にある鏡に出現する方法もありますね。まあペコムズとの連携の問題が残るので何とも言えませんが,そういう可能性もちょっとあると指摘しておこう。
『ビックマム海賊団の落とし前』
さて,最終的にルフィたちは「一時休戦」するのかなと思っていたのですが,ここまでくると一時休戦もありえないような気がしてきました。
ホールケーキ城はこわれ,将星のうち2人までもルフィは打ち負かしてしまいました。トータルバウンティ数百・数千億と思われる兵を投入した上でジェルマを得ることもできずに取り逃がしたとならば,ビッグマム海賊団の栄誉は地に落ちることは必至です。世経の社長もスクープする気満々ですし。

休戦は無い...
もはや面子の維持という観点からも休戦すらあり得ないだろうなというが現状ではないでしょうか。
また,ビッグマムがケーキを食べることでそのケーキに満足することがあっても,ルフィたちを「許す」という方向に行くよりも,ケーキ作りの職人としてサンジを手に入れようとする方が十分ありそうな気がしますし。
ここは混乱に紛れて脱出しかルフィたちには無いような気がしますね。
とりあえず合流した後,少し「時間稼ぎ」ができればクー・ド・バーストで距離を取って勢力圏外に逃げることはできるでしょうから。時間稼ぎの担い手がベッジになるのか,ペコムズになるのか,ジェルマになるのか。あるいはメモメモの実の能力を駆使するプリンになるのか。それはまだはっきりしませんが,いずれにせよ「取り逃がす形」になると思われます。
さてそうなると,「取り逃がした後」のマムたちの行動が気になります。
個人的な恨みのようなものは次の戦いがあるとした場合にとっておけばいいのですが,さて気になるのは玉手箱の爆弾の件ですよ。これの出自は魚人島であり,宝箱の出自はばれています。しかもそれをルフィたちが仕掛けていると思いこんでいる。

魚人島への影響は?(872話より)
加えて,今回彼らがルフィたちを補足できない最大の理由は見廻りウミウシが機能しないからです。機能しない理由は元自分の傘下の副船長アラディンの妻プラティネ姉さんが歌声でウミウシたちの気を引いているからです。これも最終的にバレたら禍根になりそうな出来事である。

魚人海賊団の行動すら人魚島に害をなしうる(882話より)
となると,以前の予言のとおり魚人島はビッグマム海賊団に襲われて滅ぼされてしまうのかもしれませんね。落とし前的に。無論,その前に脱出を促すのでしょうけれども。無論,シラホシが古代兵器ポセイドンとしての能力を発揮するようなこになれば,やすやすと滅ぼされたりしないでしょうが今はまだその時じゃないような気もしますし。
魚人島が襲われるようなことになれば,ルフィたちとの遺恨は更に深まるばかりとなります。このあたりの伏線の収束がどうなるかも気になりますね。
『CP0の落とし前』
さて歓楽街の女王ステューシー改めCP0のステューシーがどう動くのかも気になります。

CP0の仕事(第871話より)
四皇は世界政府から見れば脅威ですが,直接的には対決しないようにしているようです。
世界政府的に七武海・海軍・四皇の三大勢力の均衡を狙っているようですが,その実その三者が均衡を保つことの意味が世界政府的にあるのかよく判りません。そもそも七武海は世界政府お墨付きの海賊として協力者側にありますが,七武海と海軍合わせてようやく四皇と対峙できるかどうかというレベルにみえます。
今回明らかになったビッグマム海賊団の兵力をみてみれば,海軍中将あたりでビッグマムの大臣たちに対抗できるのか,イマイチ確信がもてないというのが現状です。三大将なら当然勝てるでしょうが。そう考えると勢力の均衡てきには「四皇の勢力を削る」方向性に動いてもおかしくないんですよねえ。
それに,魚人島のエピソードがどこに入るかにもよりますけれど,ルフィたちの立ち振舞によって弱体化した現状で第三勢力がビッグマム海賊団を攻めに来るというのはある意味合理的ではある。
ただ,海軍としては現在は世界会議真っ只中であり,ここで四皇の一角と事を構えるほど余裕はないでしょうし。もし世界政府が介入するとするならば,七武海のウィーブルあたりをつかって弱体化を促してくるのが妥当でしょうか。
もう一つ可能性は低いですが,世界徴兵で新たに大将になった「緑牛」のお披露目に使うか。まあそんな介入は考えられます。
四皇同士の争いという観点から見れば,黒ひげの介入も考えられなくはないですけれども,彼は世界政府の思惑とは関係なく動いていますからね。彼ならばむしろレヴェリーに介入するほうがあるかもしれませんねえ。
『ペコムズの落とし前』
さて今回のペコムズの行動は明らかに組織的な規律から外れています。ナゾムスを名乗っていますけれど,ブリュレの前でペコムズであることがバレていますからね。彼もまた落とし前をつけなければならない。

ぺコムズの落とし前は?
考えられるのは,ルフィたちを逃した後にきちんと「落とし前」をつける,かな。いい奴なんで死んでほしくはないですけれど。ゾウに逃げるというのも考えましたが,ペコムズのビブルカードはビッグマム海賊団は持っているだろうし逃げ切れるものでもないですし。ゾウの連中が報復されるようなことになるのも不本意ですからね。ペコムズのけじめの付け方も気になります。
それはそうと,今回ナゾムスを名乗ったペコムズをルフィがきちんと「ペコムズ」と読んだのはなんかいいというか,深いね。
この度が始まる前にはペコマムシだの,きちんと名前を呼べなかったルフィですけれどこの極限ではきちんと名前を呼びました。このこともペコムズの覚悟と今後の運命をなんとなく「見聞」したルフィの成長の表れなのかもしれませんね。
『そしてプリンの落とし前』
いよいよプリンとお別れという段階にいたり,最後のお願いがプリンからなされました。
思うに騙す騙されるの関係から,本当にサンジに惚れてしまったものの素直になれず,最後まで思いが空回りしているプリンちゃん。その想いは結局サンジにはちっとも伝わりませんでしたね。傍目からは否定できない恋心が見て取れるのに。

最後のお願い
さて最後のお願いにおいて,プリンはサンジの煙草を取りました。煙草は尾田先生にとってそれなりのこだわりのあるものらしいですからね。この嫌煙時代においてひたすらに登場人物に喫煙させ続けるのは,それだけ煙草に対する愛煙家としての思いがあるのでしょう。
その煙草をサンジの口から外させるというのは意味がある。いまは煙草よりも重要な事がサンジのタバコを咥える「唇」に用があるということですからね。
女が男の唇に用があるといったら,その口を口でふさぐことしかない。
...そうやってプリンはサンジに思いを伝え...そして自分のことを忘れさせるために記憶を書き換えるのだろうな。
ここまでの色々な出来事が思い起こされます。
サンジがプリンの裏切りを知ったときのシケモクの夜の涙と対比するようなその涙。記憶を消されたレイジュに真相を伝えたサンジ。

サンジと対比しながら
きっとサンジは一時的にはプリンのことを忘れてこの場は別れるものの,やがて記憶を取り戻して...それがレイジュの助言によるものになるかは,この場にジェルマが現れるかどうかにかかっていますが...殺されるとわかっていてもプロポーズをした花嫁のことを再び思い出すのでしょうね。
個人的には,サンジは言葉に出したことは守る男だと思っていますので,「最後のお願い」でキスをされたこと,自分がプロポーズをしたことを思い出せば,旅路の最後を迎えるその時にはプリンをもう一度迎えに行くのではないか。可能性が低い未来でも,そんな風にちょっぴり期待したくなるのでした。
まる。
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900話まであと4話ですから,そこいらでビッグマム編というか,シャーロット・リンリン編も終わりですかね。
肝心のマム自身がどうなるかの考察は今回深く掘り下げなかったのですが,ビッグマムの正体を知る人間が存在することから鑑みて最後にはマザー・カルメルに何が起きたのかという話はやるんでしょうなあ。
そもそもビッグマムがみんなが同じ目線で平等の国というのを作ることを目指したきっかけがマザー・カルメルであり,その中身がガキ売りの悪女だったというのですからこの因果は最後に炸裂させざるを得ない。

うーん...似ている...?(第866話より)
思うにステューシーとマザー・カルメルの羊の家にいた女の子はちょっと似ているように思うのですが,もしかしたらステューシーあたりが引き金になってそのあたりの話が動くのかもしれませんね。もちろん,その役はビッグマムの正体を知るベッジがやるのかもしれませんが。
とはいえビッグマムが痩せ過ぎている件といい,後4話ぐらいで収拾がつくのかも怪しいですし,この次のエピソードに「取っておく」ことになるのかもしれませんが。
さてどうなることやら,目が離せません。
*画像は『週刊少年ジャンプ』2018年第14号「ワンピース」第896話 ,同838話,866話,871話,872話,882話,884話,892話より引用しました。