さてと。『週刊少年ジャンプ2017年第34号』 『シューダン!』第7話 「盾と矛」の感想です。
(参考)WJ34号 他の感想記事
『ワンピース』 第873話 感想 はこちら。
『ぼくたちは勉強ができない』問27 感想 は こちら。
第7話にして2回目のセンターカラー。これは凄い。

僕の身の回りのジャンプクラスタにおいても『シューダン!』の評判は上々なわけですが,世上の評価も同様のようでなによりなのである。
扉絵は今回のメインテーマの一つであるソウちゃんと鴨志田のマッチアップなわけですが,劇中と異なり鴨志田君がソウちゃんを押さえ込んでいるように見えるのがポイントなんでしょうか。
で,今回のサブタイトルは「盾と矛」。
ふうむ。
普通,これは「矛と盾」(ほこ×たて)の順で書くわけですけれど,敢えてサブタイトルは「盾と矛」(たて×ほこ)と順番を入れ替えてきました。まあいろんな意味がありますよね。
今回のテーマの一つは七瀬晶さんの敵討ち,というわけではないですが,ソウちゃんが鴨志田くんをギャフンと言わせることです。西美園FCの守りの要である鴨志田くん(盾)と,それに一泡吹かせるための浜西FCのキーマン・桜田創始(矛?)との対決。これが一つ。
もう一つは,敵の矛である巨神兵・渥美大地(矛)とマッチアップするロクに加えてチームの支柱であるキャプテン・大和哮(盾)との対決でもありました。
そして物語もまた,浜西FCの盾がどのようにして西美園FCの矛をガードし,その後に西美園FCの盾を浜西FCの矛が突き破ったかという展開で進められたのです。まさに「盾と矛」というわけですな。
よ~ろし~い(トンペティ師風に)。一つずつ見ていくか。

ソウちゃん奇策を当てる
前回,浜西の矛であるロクが普段とはあい変わって盾となり,西美園FCの巨神兵・渥美くんへのパスを見事カットすることで作られたチャンス。カウンター攻撃ということになるわけですが,ここで敵味方悲喜こもごもな展開でしたね。
敵のキャプテンはポジションチェンジの段階で浜西FCの策に気づかなかったことに対して悔い。いっぽうで速攻をつなげそこなったハルヨシもまた,自らのミスを悔いるという。浜西FC及び西美園FCの双方が,いつもと異なるポジションに戸惑うことになるという。
このあたり,ソウちゃんの策をあっさりと成功させない横田先生のストーリー運び,焦らしてくれます。

敵キャプテンはできる男(たぶん)
何気に敵将,イケメンすね。てか,こいつできるな...。
まだ試合序盤,お話の展開はこれから複雑になっていくものだと思いますが,ここまでのところ浜西FCが全体でのプレーを描かれているのに対し,西美園FCは基本的に渥美くんの鴨志田くんを軸に描かれています。
基本,チーム力で勝る西美園FCは2/8人(うち鴨志田は舐めプ)の試合運びで対する浜西FCは全員サッカーというところが序盤の展開を決定付けた感がありますが,今後はこのキャプテンをはじめチーム力で勝負してこられるとなかなかキッツい展開になりそうな予感がしますね。

ハルヨシと見守りーズ
一方のハルヨシですが,普段試合を運んでくれるロクさんが渥美くんマークと言うことで,「自分がやらねば」と緊張してしまうという。まあ,しゃあない。そしてハルヨシママのハラハラが親子総力戦である少年団サッカーであることを思い出させてくれます。
...
......
そして前半の立役者,キャプテン・大和さんの大活躍であります。
ここまで「真面目・過保護・馬鹿力ボーイ」の印象が強かったですが,ところどころでキャプテンの片鱗をみせるようなセリフをリアルツイートしていたヤマト。今回のお話で,ヤマトがなぜキャプテンであるか見えた気がしますね。

いや,お前は格好いい
無論,2回にわたる西美園FCの攻撃を防ぎきった功は大であります。しかしながら,より重要なのはキャプテンはチームの柱であるという役割をきちんと担えているというところがポイントなんじゃないかと。
ちょっと小学生離れした固真面目さはある。呟く発言は一歩間違えば「芝居がかって」みえて滑稽ですらあります。しかしその一言でハルヨシは救われて,チームの緊張が取れたわけです。その事実こそ,大和哮がキャプテンたる職責を果たしている証左なわけです。

キャプテン大和
ぶっちゃけて言えば,「やだ格好いい...」というやつです(ん)。
決してイケメンではないし,固真面目で,比較的体格のよろしい(婉曲的表現)おぼっちゃんなヤマトの格好いいことよ。
彼のすごいところはチームのピンチに盾としてきちんと機能し,かつチームの精神的な盾としてチームメイトがのびのびとプレーできるように空気を整えたところですよ。

2.5枚目の魅力
まあ,顔面ブロック→ハンドという華麗な流れはまあコメディですよね。それを真面目なヤマトがやるから面白いと言うか。ある意味「おいしい」というか。ヤマトの格好良さは2枚目のそれでもなく,3枚目のそれでもない。2.5枚目キャプテンのそれですよねえ。
でもって自ら招いた敵フリーキックのピンチをきちんとブロックするところなんか,まさに手に汗握る展開でしたからね。ヤマトSU・GE----------!!! という熱いシーンでした。

ふんぐ!!
この時の敵のキッカーは当然,巨神兵・渥美大地くんです。「なぎ払え!」という鴨志田くんのコールも相変わらずアレを想起させるのもさることながら,ヤスが勝手に命名した「プロトンビーム」ってあれやん...あいつが口から吐くやつやん...(何弁だ)。
その敵の最強の「矛」を味方の最強の「盾」が防ぐ。
キャプテン・ヤマトの本名「大和哮」の「哮(たける)」という漢字は「咆哮」という言葉にもあるように「哮(たけ)って咆哮すること」なんだそうです。(出典「字通」)。
渥美大地くんが巨神兵の咆哮ならば,大和哮もまた静かにたける男だったというわけか。名前一つとってもなかなか奥が深いですね,『シューダン!』は。

もしかしてその髪型は巨神兵カットなのか...?
そんなヤマトに対して「見事...!」と声をかける渥美くん。あれ,なんか同じようなこと言っていますね。実は二人は盾と矛の違いはあれど,似たような性格なのかしらん。戦い終えた後の静かな握手が今から期待できそうな予感。
...
......
さて,守護神・ヤマトタケルノミコト(違)の大活躍によって得られたチャンス。もっともヤマト一人だけの守りじゃありません。渥美をマークするロクとの二人の力による反撃開始というところが,チーム一丸となって守っている浜西FCらしいですよね。


サンキュー&最高
「サンキュー」と言うロクと「最ッ高だぜ」と言うソウちゃん。一方で「ボケクソ」と言う鴨志田が対極的であります。

ボケクソ
チームとしてのまとまりというのでしょうか,信頼関係というのでしょうか,やはり西美園FCは鴨志田の舐めプのせいでいま一つ実力を発揮できていない感がありますね。
...
......
で,ソウちゃんです。
ぶっちゃけた話,ソウちゃんは浜西FCの「矛」かというとどうなんですかね。ポジション的にはMFなのか,FWなのか...。少なくとも得点王ではないわけですが,早い脚力を活かしたチャンスメーカーといった感じなんでしょうかね。ある意味,点に結びつける為のプレーヤーである。「矛」でいうならその持ち手部分。矛先を操る役割とでも言うのでしょうか。
いうならば「頭脳」。矛を操る「使い手」であります。

トップブリーダー(え)も認めるソウちゃんの実力
対する鴨志田は西美園FCの守りの要であり,イージス(アテナの盾)の中核を担う男。まさしく「盾男」でありましょう。舐めプでありながら,裏付けられた確固たる自信。ドリブルも防ぐ。パスもカットする。ロングシュートは打てない(?)。

慢心王・鴨志田氏の分析
1vs1でも1vs他でも自分なら防げるという自信。それが鴨志田聖士郎の持つ力であり,かつ慢心でもある。
ソウちん,まさかの鴨志田へのパス。

奇策!
まあ何ですね。鴨志田君が慢心王だったからこその作戦ですけれど,結構リスキーではありますよね。普通に相手がボールを受け取ってしまえばソウちゃんの「凡ミス」ってことになってしまいますし。おすし。
僕はサッカーのプレー自体はトンと分からないのであれですけれど,結果的に相手が微妙に反応しにくいところにボールが転がるように仕向けた「パス」だったということなのかな。
見事こぼれたボールを拾い上げた,得点王シュンくんがゴールを決めたのであった。

矛の「使い手」が矛を操る
なるへそ。浜西FCの「盾」がロクやヤマト,ヤスを始めチームのみんなであるならば,浜西FCの「矛」は使い手であるソウちゃんと,カズ・得点王のシュン(矛先)といったチーム全体での矛であったという,ナイスなプレーでしたね。
かくして「盾と矛」第一ラウンドは見事浜西FCの勝利。ですが,まだ試合は始まったばかりですからね。この後,「チームとしての」西美園FCがどんな盾と矛に化けるのか。対する浜西FCはどのように二の矢,三の矢を放つのか。

べ!!(何弁だ...!?)
次週もますます見逃せない遠州カップなのであった。まる。
...
......
以下余談。
『今週のきわめて鴨志田』
今回ソウちゃんに「ギャフン!」とされる形になった鴨志田くん。彼は口だけあって,実力はソウちゃんより上なんでしょう。またチーム力についても,これまでは浜西FCに圧勝という試合結果を出しているのでしょう。

慢心王の末路
それが慢心となり,予測もつかなかった失点につながったのだとすれば,この後の彼の反応が興味深いです。
口は災いの元ということで,イエローカードをもらってしまいました。...あれ,先日もイエローもらったって先週言っていませんでしたっけ? イエロー2枚で試合に出られなくなるのでは(僕の勘違いか?)
ただまあ,これで反省したようにも見えないので,もしかしたらこの試合についてはどこかでもう一枚イエローもらって退場なんてあるかもしれませんね。
そこに至るまではチームメイトとあれこれあったり,ソウちゃんとアレコレあるのでしょうけれど,もし試合途中でもう一枚もらうことがあるとしたら,今度はナナセさん絡みかもしれませんね。
今回,クレバーな試合運びをしたソウちゃんですけれど,ナナセさんもまたクレバーなプレーヤーですから。鴨志田のイエローを誘うようなプレーをやってのけるのかもしれない。
『今日のママン・ズ』
ハラハラしたり,喜んだり。

トイレの長い母ちゃん(遠いからです)
少年団サッカーはギャラリーというか支えるママンたちも必死ですからね。てか,ヤマトの母どんだけ怖れられているんでしょうか。顔面ブロックのヤマトに対する反応を怖れるママたちもさることながら,浜西FCと西美園FCの面々の血の気の引いた表情は一体どうよ?

母ちゃん怖い
明らかに当てた本人がビビッている。そんなに怖いか,ヤマトの母ちゃん...。
『今週の七瀬晶とソウちゃん』
今週は七瀬さんはベンチつきっぱなしということで,登場回数が少なめかと思いきやなかなかにどうしてよ。いろんなところで色んな表情を見せてくれましたね。

七瀬コレクション(一部コアなファン層向け)
個人的にお気に入りのシーンは,渥美君のプロトンビームを見事抑えたキャプテン・ヤマトに対するリアクションかな。

大口ナナセさん
大口開けてコーチらと一緒に「うッ おおおおおおッ」と叫ぶシーンはヤマトのナイスガードに対する読者のリアクションそのものであって,めっちゃ共感性が高いシーン。心の中で一緒に叫びたくなっちゃった人もいるんじゃないかな。拳をぎゅっと握っているところなんか,すっげーその気持ち分かるというか。いいシーン。
あとはもちろん,見事,鴨志田をギャフンといわせて先制点を導いたソウちゃんに対するこのリアクションでしょう。

頬を朱に染めて
「ソウちゃん...やるぅ......!」
とちょっと頬を染めながら言葉を漏らすシーン。有限実行のソウちゃんがちょっと「サッカー選手として」格好よかったので思わず,ですかね。無論,サッカー選手としてソウちゃんを見直しただけで惚れたわけじゃないですけれど。
でもいいんです。
「千里の道も一歩から」
ていいますからね。再度まる。
【追記】浜西FCメンバー表

いちおう再掲。
たぶんそのうち,公式が作ってくれるはず...!!
横田先生の前作,「背すじをピン!と」第10巻はこちら。
余禄。
今回は近所のサッカーおじさん(仮名・ナカジさん)は1コマのみ。

西美園FCフリーキックという場面で「あの位置からのフリーキックは絶望的ですな!」とか夢中になって解説してくれるのはいいのですが,気分を害したソウちゃん母よりやんわりと窘められた。
いや,ナカジさん(仮名)は別に西美園FCのファンとか保護者じゃないでしょうし。単に夢中になって解説しちゃう,サッカー好きなおじさんなんですよね。
こういうキャラクターの存在はちょっとお話にアクセントというかコミカルな空気を運び込んでくれるので面白いです。
*画像は『週刊少年ジャンプ』2017年第34号「シューダン!」第7話 より引用しました。