
週刊少年ジャンプの発売日ですね。だが,そんなの全然関係なく,今日は日本サッカー漫画にきらめく『キャプテン翼』について語りたい。まあそんなに大仰に構えるつもりは全く無いのですが,オッサン世代がガキだったころにジャンプといえば『キャプテン翼』。そんな時代があったのです。
いま,『ジャンプ+』で無料で1000p読めます。可能なら小学生編から読むことをお勧めする。
いまでこそサッカー漫画しか書けない高橋先生みたいな自虐的なネタすら流れてしまうわけですけれど,当時の『キャプテン翼』人気はすごかった。「腐腐腐...」と笑いながら同漫画を読む同級生の女の子がちらほら見かけられるほど,大人気だったのです。
とくに小学生編が終わり中学生編のころは相当の人気だったように覚えていますが,その中でも僕がとても好きだったのが南葛中学V3を目指す大会の中でも特にその地区予選,南葛中学VS大友中学の対決ですよ。
この試合は色々と異色なストーリーでありました。
かつて南葛FCでともに同じチームで全国優勝をもぎ取ったチームメイトが別々の中学に進学。エースの翼をはじめ,元修哲小の面々など華やいだ面子で中学V2を成し遂げている「陽」の南葛中と。南葛FCにおいてもモブ...もとい縁の下の力持ちとしてチームを支えてきた浦辺をはじめとする「陰」の大友中と。

因縁の対決
そんな因縁を携えた対決であったことも気分を盛り上げたわけなんですが,なによりも新たなるライバルの出現が大きく燃えるところでありました。
新田瞬
大空翼の後に南葛FCとしてエースストライカーとして颯爽と登場し,南葛FCを見事V2に導いた新星です。

新田瞬
設定上のこととはいえ,小学時代を含めて南葛V3という状況,既に国内に敵なしといった観もあった大空翼。あの明和FCとの激闘をなしとげた日向小次郎すら眼中になく,一度は翼をして絶望に追いやった三杉君ですら過去のものとなっていました。挙句の果てには「岬君と戦ってみたいなあ」と言われてしまうくらい,翼にとって国内には「敵は無い」状態。
そんな大空翼を久しぶりに燃え上がらせてくれたのがこの新田瞬という男なのでありました。
まあぶっちゃけていえば,サッカー技術は翼より低い。でも100メートル11秒台という俊足と,荒削りながら光るサッカーセンス,そして自ら「隼シュート」と名づける強烈なシュートの持ち主。
...文字で書くと果てしなく中二くさい(実際中2だけれど)野郎なんですけれど,まあそんな痛々しさがまた当時はすがすがしかったわけです。この後キャプテン翼には謎ネーミングの必殺シュートがオンパレードになりますけれど,新田の「隼シュート」なんてその先駆けみたいなもんですからね。まあそんな痛々しさも,当時はそれなりに「新たなるライバル出現」という観があったわけです。
大口をたたいていた割には1対1では翼にかなわないと見た新田は,翼のプレーを見て思いつきます。

中二的思考
うん,すげえ。
まあ普通に考えて,DFからのロングパスを翼のマークを外しながら,ノートラップでシュートをゴールに打ち込むなんて不可能もいいところです。実際に試してみても新田君のタイミングは全く合わないのである。
それでも,翼のマークを外しつつシュートを空ぶっても空ぶっても挑み続ける新田に,大友中カルテット率いる浦辺たちはボールを送り続けるのである。
そして徐々に新田がタイミングを合わせてくるのを見て,追加攻撃の要を認めた大空翼が新田のマークを外れます。その翼が決定的な場面でシュートを放ったにもかかわらず,ついに大友中カルテットとキーパー一条は翼のシュートをしのぎきるのであった。

一条△□×(さんカッケー死角なし)
これだけでも熱いのに,ここから先が更に熱いのである。大空翼が新田のマークを外れている以上,新田は余裕で「隼シュート」を決められる状況。そんな新田にボールを送る浦辺たちの先には,翼がいなくてもノートラップランニングボレー隼シュートを打ちに行く新田の姿があった。


やだカッコいい...
このときの新田は,まさしく大空翼のライバルになりうるエースストライカーとしての片鱗を見せ付けたのであった。たった4回程度でノートラップで決められるようになるとは漫画かよ!と突っ込みたくなりますけれど,ええ,漫画ですが何か?
いや,この時の新田君はマジ「才能」を感じさせる男だったのでした。
これで翼のマークを外しながらいくらでも隼シュートが打てるようになったわけですけれど,その後は南葛も自力を出して新田君にボールを渡さなくなります。まあ,そうだよね...。いつもDFからのロングパス一本やりじゃあ,攻撃として単調すぎるものね...。
せっかく「ノートラップランニングボレー隼シュート」という舌をかみそうな長い必殺シュートを身に着けたにも拘らず,今度はパスが全く通らなくなってしまいます。まあオフサイドトラップかけ放題ですよね,たてパス1本ばかりじゃ...。
これがねえ。また切ないんですよ。パスを送っても送っても届かない。シュートさえ打てれば南葛DFも森崎君も一歩も反応できないというのに,そのシュートを打たせてもらえないんです。

新田にパスを送るだけ
「それでも俺たちは新田にパスを送るだけだ!」という浦辺の声もむなしく,試合終了の笛が鳴る。むなしく最後に「ノートラップランニングボレー隼シュート」を叩き込む新田君の姿がとっても寂しげで,でもちょっと感入るものがあって,なんともいえないんですよ,これが。

打たせてもらえなかったシュート
ま,最後はチーム力で負けているわけですけれど,いみじくも日向小次郎が言っていたように,新田とコンビが組める奴がいたら5-3ぐらいで勝てる試合だったわけですよ。でも実際には彼我の戦力差は明瞭で,新田君にパスが通ることが無いわけです。まあそりゃそうだよね。主人公のいるチームが地区予選で負けるわけにはいきませんし(身も蓋も無い)
しかしこの「...だが無念よ。いや、あと一歩だったのだがなあ」という感じがしんみりして,僕はとってもこのお話が好きなのでした。
...
......
その後,日向君の復活もあって新田君はほとんど目立たない...もとい普通の脇役に安住の地を見出したような気がしなくも無いですが。シュートインフレもあいまって,新田君の成長譚はその後あまり触れられることもなかったように記憶しております。あの時の彼は何だったのだろう...(遠い目)。
ああ,なんだかあらすじだけ書いて満足した駄目な感想の見本みたいですけれど。
ちなみにこの後の日向君VS三杉君の試合もなかなか熱い。小学生時代に実現できなかった対決が描かれていくのは当時楽しくてたまらなかった記憶が。もし興味を持ったら『キャプテン翼』をぜひ読んでみてください。まる。
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そして,新田君が「くそォ!」と叫びながら最後にゴールに蹴りこむシーンを見るたびに,常に告白の機会がかき消されたあの女の子を思い出す。
告白さえさせてくれれば...その無念の姿が重なります。それでも俺たちは,俺たちは,彼女が想いを伝えるのをただ待つだけだー!という4年間でした。まる。(これが言いたかっただけ)
*画像は『キャプテン翼』「隼対翼」から引用しました。